
― (リトモスタッフ) よろしくお願いします。
(佐々木先生)よろしくお願いします。 まず、エチュードについて何を聞きたいと思って、このインタビューになったのかしら?
― はい。私はエチュードを扱うときによく悩みを持ちます。まずは、どういった意識を持つといいのでしょうか。心構えといいますか。
そうですね。私の意見としては、子供の才能の発達に合わせてどんどんテキストを変えていく方がいいと思っています。一つのテキストに執着しないでね。そして、それと同時に先生は生徒に楽譜の基礎を正しく教えるということが大事だと思います。
― 『楽譜の基礎を教える!』ですか。伺わなくてはいけないことがたくさんありますね。笑
追々お伺いさせていただきますね。次回のレクチャーでもこのことについてお話いただけますか。
もちろんいいですよ。 それと、10本の指の差について理解する機会でもありますよね。
― 10本の指の差…。
10本の指の差というのは、・長さ ・強さ ・繊細さ などそれぞれ違うわけですよね。自分の持っている指のクセを知る機会でもあるのです。
― なるほど!生徒の手のクセを見抜く機会でもあるのですね。
そうですね。そして、できるだけ良いクセをつけ、悪いクセを取りのぞくチャンスでもあるのです。
― なるほど。では次に、エチュードを使う目的ということについて先生にお伺いしたいのですが。私自身指導の時に何をどこまで要求すればいいのか迷います。正確に弾けなければ上げてはいけないのかー。テクニックがついていないなら少し簡単なエチュードに戻った方がいいのかーなど。
エチュードを弾く目的は色々とあると思います。 ・単に指練習として使う ・ソルフェージュ的に使う ・音楽的に使う ・イメージトレーニングに使うなどね。
― 指練習・ソルフェージュとして使うというのは意識の中でありましたが、後の2つは意識の中にないかもしれないです。お話を伺うのがとても楽しみです♪ まず、1番目の指練習としての使い方をお伺いできますか。 指練習として使うというのはどの先生も考えていることですよね。でもこれを、目的意識を持って行うのはとても難しいですよね。
そうね。まずは、10本の指が思うように動けるようにする。その為に、エチュードの中からできる限りの違った技術の部分をとり出して、どの技術でも対応できる指をつくることを目指す。種類が多いほど良いと思いますよ。ただ、注意しなければならないのは、個人差があるということ。必ず生徒の身体的発達と、頭脳と精神面の発達も考慮しなければいけないと思います。 そして、頭も耳も注意力も欠いた状態での単なる指練習の時間を長くしないということ。これもとても大事ですね。そして、単なる繰り返し練習にしないで、付加(価値)をつけて、どんどん楽曲として弾くことですね。
― 付加価値というのは?
より強いプレッシャーをかける為に、様々な変奏を試みるのよ。例えばリズムを変える。そして、アクセントの位置をずらすことで全部の指を鍛えることを試みたり。
― テキストの中にはリズムのバリエーションが載っているものもありますよね。それで、 アクセントの位置までずらすというのは発見ですね! これも、レクチャーの中で少し実践していただけますか?
いいですよ! 話を戻しますね。そして、曲の中で指をきたえるということが大事なのだと思います。だから、先生は小品(あらゆるジャンル)を使って、各曲に必要なエチュードを探しあててあげるといいと思います。
― ということは、順番通りにエチュードをやらないということですか?
そうですよ!
― なるほど。当たり前のように順番通りに課題を出していました。そして、少し苦手なテクニックの分野(例えばアルページョとか)になると、すごく長くかかってしまい時間がとてもかかる。生徒もいつまでたっても弾けないー・・としょげた顔をしています。
それは、曲と連動していないからでしょうね。 「この曲を綺麗に上手に弾くために、このエチュードをさらいましょう」という風にすれば、即実践で使えるし、生徒もやりがいを見つけると思いますよ。
― そうですね。エチュードを頑張る意味や目的が生徒の方にも持てますよね。
そして、そういう中で、子どもたちが自分流の練習の確立ができるようにするの。ひとりでさらえる部分や、方法を身につけることができるようになります。
― 確かに。難しいところはどうやって練習すればよいかというのを、子どもたちが自分で解決できるようになるということですね。そういえば、私もそういう時期があったかもしれません。だんだん先生に頼らなくなるというか、自分で解決していく術を身につけていくというか。
そうでしょう。そういったことで自信を身につけていくのですよ。
― はい。 では次に、ソルフェージュ的な要素といえば、私は幼稚園生から小学生の生徒に、自分たちで読譜をするよう要求するようにしています。特にエチュードに関しては。音譜に慣れ、目で見たものを手が反応できるという状況を作ってあげたいと思い、そのために簡単なエチュードを取り入れているのですが、そういうことでよろしいのでしょうか?
いいと思いますよ♪ ソルフェージュ的というのは、・目は先を読みとり・頭脳が理解して・指に命令をだすという力を鍛えてあげるためですね。
― 具体的に言っていただけるとわかりやすいですね。 そうですね。楽譜を見ながら指を動かして、音を弾ける。楽譜から音の変化を読み取ったら、手がそれに対応できるようになるといいと思っています。子どもにもそういった練習を取り入れています。鍵盤を見ないと弾けないとなると、後々大変なのではと思いまして。
ええ。いいと思いますよ。あと、・口に出して指と同時に歌うというのもいい練習になりますよ。これは、様は2重のプレッシャーをかけているの。出来ない子どもが多いですよ。
― 私も家に帰ってトライしてみます。。笑
はい!これは頭と目の訓練になるんです。からだの中に最低2人の人間が必要ですからね。 ピアノという楽器は、ひとりでオーケストラの人数分の音楽が表現できる楽器だということも小さい生徒さんに説明してあげるといいですよ。
― 『表現しなければいけない楽器』と言うより、『表現できる楽器』というのがいいですね(笑顔)
次に子どもの手を作るためのエチュードの使い方についてお伺いできますか?いい手でいい弾き方が出来れば、ピアノを弾くのに苦痛が減りますよね。生徒にいい手を身につけさせてあげたいです!
手を作るためにはどのようにエチュードを使うといいでしょうか。
今必要なものをピックアップして用意してあげるのが一番ですね。小さな生徒のためのものなら、レッスンの場で即興でたくさん作ってあげればいいのよ。譜面に音を加えていくのも楽しいものですよ。
― 作曲するということですか!確かに使っているテキストで物足りなさを感じることはありましたが、なかなか作るところまではいきませんでした。 生徒の中に30番エチュードを使う子が多くいます。でも、やはり完成度は様々で。 30番エチュードを弾きこなせない生徒もいるんです。その時は、少し簡単なエチュードにしたほうがいいのでしょうか。
30番エチュードあたりだと、やはり弾きこなせない子もいると思いますよ。もちろん、専門的に勉強するつもりの子はきちんと弾きこなせなければいけないと思うけど。
― 専門的にではなく、趣味としてピアノをやっている生徒です。ピアノは好きだし、素敵な曲やより高度な曲を弾きたいという願望はあるんです。それには、やはりエチュードはするべきだろうと思い、課題を出しています。 ですが、なかなか最後まですんなり通せない、あるいはテンポが速くならないなど、色々問題点があります。そういう時に、今このエチュードを何のために勉強させているのか、何を得なければいけないのだろうと悩みます。
ピアノを続けたいという意志がある生徒なら、色々なバリエーションを身につけさせてあげることが大事よね。 先にも言いましたが、ひとつの使い方として、例えば30番エチュードを2小節ピックアップしていって、色々なテクニックを満遍なくやっていく。そして、少し慣れてきたら一つの曲の分量を増やしてみる。弾けるようになったら、じゃあ、全部にチャレンジしてみましょう!というやり方もあるはずよ。その時に、曲の最初を弾くのではなくて、少し難かしいところだけピックアップして練習してあると、通す時に難しいところがスムーズに弾けるし!
― なるほど!
順番通りにやろうとしないで、今勉強しているこの曲のために、ここをこうやって勉強してみてっていうと、生徒も目的を持って勉強しますよね。
― そうですね。 少し話がそれるかもしれませんが、すいません。いい手の作り方について先生にお伺いしたいのですが、どうすれば子どもはいい手を身につけてくれますか?
まあ、言えることはそりゃあ先生がいい手で弾いてあげることよね。 そして、そこから出てくる音の違いを子どもに聴かせてあげることかしら。
― そうですよね。このことについては何度かレクチャーの中でもお話いただいていますよね。私の生徒も良い手で良い音でエチュードを弾けるようになるといいです。
先生より『エチュードを音楽的に使う』という提案をいただいておりますが、これについてお伺いできますか?
まずは、簡単な構造を知ることができますね。 A-B-Aの形で書かれているものが多いですよね。
― そうですね。30番エチュードなどはすごくわかりやすく書かれていますよね。
そう。そして、次にハーモニーの変化を感じること。
― うんうん。30番は調整を感じやすいですね。よく調整を感じながら弾くと次が予測できるわよとアドバイスをしています。
そう。導音を見つけるということも重要です。そして臨時記号にびくつかないようにする。 その他メロディーの長さから来るブレスの位置を知ったり、メロディーの山と谷を意識したりすることも重要ですね。
― 音楽的に使うというのは構造を読み取る力とそれを表現するという練習にも使うということなのですね。私自身、意識をしないと中々そういう要求をしないでいるかもしれません。これは、早い段階(小さな子ども)で要求していってもいいですよね?
もちろんです。出来るだけ早い方が良い。その時必ず先生が音楽的に最高のお手本を弾いてあげること。
― はい!! では、次は高度なエチュードを扱う場合のお話に入りたいと思います。 ある程度専門にされる方などは、また別に意識しなければいけないこともあると思いますが。
もちろんそうですね。
まずは、・読譜が早くできること ・指が正しく動くこと ・暗譜が正しくできること この条件がしっかりクリアできているかを確認しましょう。ですが、一番大切なのは、音楽を表現することです。エチュードという名がついていても、その作曲家の作品にふさわしい音を出し、曲が持っている表情を限りなく想像することが大事です。そのためには、・心理 ・心象 ・情景などあらゆることを感じ文学的、絵画的に捉えることも不可欠です。
音量の変化だけで「表現できた!」と思わないで下さい。 ・音質 ・音色の変化も感じる必要があります。
― 1つの作品として捉えるということですね。私も、ショパンのエチュードも素晴らしく魅力的だと思いますが、ラフマニノフやスクリャービンのエチュードも作品として素晴らしいですよね。とても大好きです。そこから遡ればツェルニーだって音楽的にとらえるという要素を十分に感じますね!
次回のレクチャーでは、30番エチュードに照準をあてて手の作り方やバリエーションの取り入れ方などお話いただきたいと思います。その他に、ラフマニノフやスクリャービンのエチュードの作品としての魅力にも触れられたらいいですね!
〜インタビューを伺って〜
今回もとても勉強になることをたくさんお話いただいた様に思います。私自身がとても伺いたい内容でしたが、教えるうえで生徒の手の作り方や読譜力を身につくようにということは、どの先生も願うことではないでしょうか。【テクニックを身につけるというのはどういうことなのか】ということを考えるいいキッカケとなりました。 2月22日のレクチャーでは、本日伺った内容を実践でレクチャーしていただくと共に、各先生方の日頃指導するうえでの悩みを取り上げたい思います。レクチャーの中で取り上げることで、すべての先生方の解決の糸口となることと思います。
小さな会ではありますが、指導者の悩みや経験、意識を共有できる場となることを願っております。



